ソフトウェア誕生の歴史
 
1960年代、読書やプラモデル作りが好きな少年がいました。

1980年代、パーソナルコンピューターが登場し、雑誌のプログラムを打ち込んでは動作させたりするのに夢中になっていました。

1990年代、職場でも普通にPCが活用される時代になり、自作のプログラムを組んで動かすようになっていました。

1990年代後半、私は町内会の子ども会の育成部長を引き受けました。過去の天気を数十年分を見て、晴れがちなな日に行事をやりたいと思い、そのようなソフトを探しましたがありませんでしたので、自分で作り始めました。

2000年代、コンテストがあったので、そのソフトで応募しました。その結果、「優秀賞」という光栄な賞をいただいただけでなく、VECTOR社の定番ソフトとして扱っていただいたり、ソフトウェアのミシュランガイドと評されるヨーロッパのソフトニック社の評価で、★9個の評価をいただいたりしました。そして、その後ずっとフリーソフトで一般公開してきました。

2010年、どんな世界にも変化や変動が訪れることがあるように、「ビジュアルお天気メモリ」にも激動・激変が訪れました。それは何かと言うと気象庁の「気象庁年報」CDのデータが2010年以降は使えなくなったことです。
 
 2009年までは、「気象庁年報」CDのデータを付属の「メテオデータビューアー」で閲覧し、かつクリップボード経由で外部に書き出し、エクセル等のソフトウェアで、誰もが自由に加工して使う事ができました。「ビジュアルお天気メモリ」も、言うまでも無く「気象庁年報」CDのデータを使っていました。それが、2010年年報からはクリップボード経由で外部に書き出す機能が削除されました。そのため、多くのユーザーが従来までの利用が出来なくなりました。気象業務支援センターに問い合わせ確認しましたが、とにかく2010年データ以降は、「気象庁年報CD」のデータが使えなくなった、このことは全ユーザー共通の事実でした。
 
 では、利用するためにはどうしたら良いのか? その点を気象業務支援センターで問い合わせしたところ、選択肢は2つあり、「気象庁WEBサイトで提供されている無料データを使う」という方法か、「気象庁からFTPでオンライン配信される有料データを使う」という選択肢でした。
 
 そこで、一つ目の選択肢である「気象庁WEBサイトで提供されている無料データを使う」という方法を試して見ましたが、「これでは使えない」というのが結論でした。「なぜ?」 かというと、気象庁WEBサイトで提供されているデータは、気象庁年報の一覧表のデータを、数項目ずつ抽出して、4枚のファイルに分けて表示しています。1枚の一覧表に戻すには、つなぎ合わせなければいけません。さらには、そのデータの項目の並びの順序が、元の気象庁年報の項目の順序とは異なるので、単純につなぎ合わせても、並び順を入れ替えなければ同じにはなりません。これだけでなく、さらに、「一つの同じ項目が、AのファイルにもBのファイルにも存在する」重複の状況でした。さらに、降雪量の項目のとある月で、本来ならば「現象なし」の「--」とすべきものが、「欠測データ」の「×」と表示している項目があり、これでは使えません。使うためには、「現象なし」なのか、「欠測データ」なのかを一つずつ確認して点検しなければなりません。しかも手作業でです。手作業で元に戻す、確認する、というのは口では簡単ですが、実際にやるとなると非常に危険かつ大変な事になります。人間の作業には間違いが付き物です。どんなに集中して行っていてもです。複雑な作業中に、手順ミスや人為ミスで不適切なデータ配列になってしまうかもしれない危険を伴います。さらに、1ヵ月や2ヵ月分くらいの作業ならいざ知らず、1年1地点分12ヶ月、つまり12回の作業量を行う労力と危険性、それを全国155地点分作業する、さらに毎年作業をするとなると、その膨大な作業中に人為的ミスが混ざりこむ危険性は余りにも大きく重大なものでした。さらには作成したデータベースを点検する作業も行うとなると、「実務的に信頼性を必要とするレベルでの使用には全く適さない」ということがわかった、ということです。今までの経験で、このデータベースの作成中に人為的ミスを完全に排除できなかったので、だからこそデータベース作成専用のツール群および自動化システムの必要性を痛感して構築してきたのです。
 
 ゆえに、2つ目の選択肢である「気象庁からFTPでオンライン配信される有料データを使う」という選択肢を取らざるを得ませんでした。このデータならば、気象庁年報CDと同じ形式の定型の一覧表なので従来までの使い方で使えます。「ビジュアルお天気メモリ」では、この気象庁年報データの一覧表のファイルを使って、専用の自動化ツールに定型のデータをセットして、後は自動的にデータベースを作成できるというデータベース作成の自動化システムを運用していました。データベース作成における膨大な労力を軽減し、かつ人為的ミスを完全に排除することの重要さを痛感してきただけに、「オンライン配信の有料データを使う」という事、これ以外の選択肢はありませんでした。
 
 ところで、「有料?」、「どのくらいの料金なのか?」、これは非常に重大な部分です。そして確認して驚いたのが、想定外の料金だったということです。この料金表は気象業務支援センターのWEBサイトに載っていますので、そちらで実際に確認していただきたいと思いますが、「ビジュアルお天気メモリ」で使っている過去の地上気象観測統計値データは、この項目1種類だけで、1年12ヶ月分で、なんと約40万円です。これを納めなければ1年分のデータが得られないのです。となると、何種類・何十種類ものデータを使っているであろうTV局や新聞社のレベルではかなりの経費がかかっているという事になります。今までは、1年遅れとは言え、1年分の同じデータCDがわずか数千円で入手できていたので、個人の小遣いの範囲内で用意し使えていました。だからフリーソフトでずっと提供できたのです。しかし、2010年からは年間40万円必要。これはもう個人の小遣いの範囲の限界をはるかに超えています。さらにそれだけでなく、オンライン配信を受けるためには、そのための専用のFTPサーバーを持たなくてはいけません。その設備費用もかかります。サーバーPC、サーバーOS、ファイアーウォール設置といった初期費用だけでも最低でも約40〜50万円ほどかかりますし、1年365日分の維持費・管理経費だけでもさらに最低でも20万円ほどかかります。だから、最初の初年度で約100万円超、次年度以降も毎年60万円は最低必要経費がかかっていくという計算です。もう完全に個人レベルの範囲を超えます。

 なお、誤解の無いように説明しますが、実際に見たのでわかるのですが、気象庁が配信するFTPのデータというのは大型の専用コンピュータからバイナリで配信されているもので、その全国への配信業務のために何人もの専門要員を必要とするという専門の業務内容のものになっています。ですから、そのための必要経費がかかっているものなので、このような料金設定なのだということです。決して法外な料金では無いという事で、誤解の無いように補足説明しておきます。
 
 その中で迫られた選択肢が2つありました。一つは、「もうデータ入手が出来ないので、フリーソフトとして提供するのは断念する。」という選択肢です。しかし、開発者として、今まで多くの皆さんに使っていただいて、光栄な賞やら評価、感謝やら激励のメールを多数いただいてきた状況から言えば、そんなに簡単に止める訳にはいかない、出来ればこのままソフトの提供を続けていきたい、そんな思いがありました。しかし、簡単ではありません。会社を設立するとなれば、脱サラという重大な環境の激変を覚悟し、決意しなければなりません。重大な岐路でした。「脱サラ」というと聞こえは良いかもしれませんが、良いのは聞こえだけで現実的には厳しいものです。どうすべきか迷いに迷いました。しかし、2つ目の選択肢を決断をしました。「会社化してソフトウェアを後継者に引き継ぎ育てていく」という決断です。
 
 現在は、気象庁が本格的な気象観測を始めた1961年以来すべての、半世紀50年超のデータ収録を完了させ、「全日本気象録」 として提供しています。

また、アンドロイドアプリ化も完了し、Googleプレイより提供しています。

アップル、iOSアプリ化も完了し、アップストアより提供しています。

また、海外から来日された方々にも便利なように、英語表記シリーズも提供しています。

また、通信環境が使え無くても使える、「電子書籍」シリーズも提供しています。

今後も、多くの方々に喜んでいただける製品の開発と提供が使命と、頑張っていきたいと思います。

どうぞ、今まで同様のお引き立てを、よろしくお願いいたします。

敬具